映画とどこかまで行こう

主に観た映画の感想を。新作・旧作、劇場・DVD鑑賞混じります。時々テレビドラマも。

今年前半の何本か、まとめ

アメリカンスナイパー

 実話ということを差し引いても、もっとドラマチックに描くこともできたと思う。

例えば、何か一つの目標を設定して達成するまで(強敵を仕留めるまでとか)を描くとか、何か印象的なトラウマポイントを作り(子供を誤射してしまうとか)、それが忘れられずに狂うとか。そうしたらもっと分かり易くなるし、盛り上がりもする。

でも監督はそうしない。盛り上がらないように盛り上がらないように、終わりの見えない戦争と、それに取りつかれてじわじわ狂っていく戦士を描いている。終わりがないから戦場に後ろ髪をひかれ、帰国しても「自分ができたかもしれない何か」について考えることを止められない。

よくこのトーンを保てたなと思う。

実際問題、目標を一つクリアしたところで戦争は終わらないし、ひとつの分かり易い出来事が理由で精神が狂うわけでもない。次から次へ敵は出てくるし、戦場にいる緊張感の影響は、そんなに単純なものではないだろう。

淡々としていたのはまた、家族が存命だからということもあるだろう(お子さんに配慮して殺害シーンは省いたとWikiにはあった)。弟さんも劇中、精神状態が心配されたにも関わらず(父親は「アメリカの男はかくあるべき!」的な人物だったし、兄は英雄だし、つらい立場になってやしないか)、その後どうなったのか曖昧にしてあったのも、そういう配慮なのかもしれない。

その「淡々」の中で、ちょっと面白かったのは敵方のスナイパーの存在だった。まるきり鏡のようなのだ。そしてあの銃弾が届いたときに、二人はリンクした。そして、どっちが倒れようとも、何も変わらない。

ただ、これはアメリカの人や、戦場および周辺国の人が見たらもっと違う感慨が湧くはずなのだ。彼らにとってはあの戦争はもっと身近なものだろうし、主人公本人に知り合いが助けられた人もいるかもしれない(そして殺された人も)。主人公の活躍や死について、向こうの人はもっと生々しい記憶があるだろう。この映画を見る時は、現実の記憶で味付けするんだろうと思う。

 

フォックスキャッチャー

あまりにも恐くて態度に困る。あそこまでやるとホラーかコメディだ。あんなに描いてることはつらいのに。

 

イミテーションゲーム

切ない話。センチメンタル過ぎる嫌いも。

カンバーバッチにとってあの役はハマり役だとも言えるし、安易過ぎるとも言える。もうアスペルガー的な人物を演じるのはシャーロック以外断る位でいいんじゃないかなとすら思った。余計なお世話だが。

 

博士と彼女のセオリー

美しい話としては描かれていなかったけれど、

魅力的で聡明な女性が浪費されていくさまが怖かった。差しのべられた手を「当然」と思うことも、思われることも。家族が誰もろくに助けてくれないことも。

毎日は、続いていくものだから、ひとつひとつこなすことに果てはない。1~2年で死ぬと思われた恋人と結婚して、あそこまで長く介助生活をすることに、こんなはずではと思わなかったかしら。

 ひたすらに頑張るヒロインが孤独で孤独で、もういいよ、あの教会の人と駆け落ちしちゃえよ、と何度も思った。お互い思いやる気持ちがない物語は、自分にはつらい。