ティム・バートンと言えば、描くキャラクターの大きくて哀しい目。大きな哀しい目つながりの題材。
長い間精神的に虐げられる話だろうと覚悟して観に行ったけれど、思ったよりも見ている側が感じるストレスは少なくて、諸々はさらっと流れて行った。ちょっと拍子抜けする位。だから主人公の苦悩や、娘の気持ちや、一体どうやって母と娘が「覚悟」を決めたのかはもう少し掘り下げて欲しかったと思う。
これが、作品としてとても好きだったらまた受ける印象が違ったかも知れない。監督はこの絵のファンらしいから、もっと思い入れを込めて作ったのだろうに、私は正直、この絵があまり好きではなくて、それを受け止められないまま見てしまった。むしろテレンス・スタンプ演じる美術評論家が批判する意見に頷いてしまった側(パーティでの「防御」シーン、素敵だった!)。
「作品の良さ」が分からないから、商売のノウハウを確立したのは旦那さんの方だし、ビジネスモデルを軌道に乗せ、知名度も上げたところで、実は画家は別の人でした、という話題を投入し、上手くやれたと言えないこともないな…などと、考えてしまう。あの旦那さんのプロモート抜きにあの絵はヒットしなかった。量産型アートっていうビジネスがいかに生まれたか、なんてちょっと感心したり。
それにしても、 同じ話を、法廷で被告としてするのと、テレビでアーティストとしてするのとでは、受け止められ方が全然違うんだな。テレビでやってる「泣ける感動の実話」も、法廷で詐欺罪で訴えられた人がそのままの話術で話したら失笑されるんだろう。人の話はフラットに聞こうと思った。
裁判長は面白かったし、ラストはすっきりする。だから、まあいいか。