映画とどこかまで行こう

主に観た映画の感想を。新作・旧作、劇場・DVD鑑賞混じります。時々テレビドラマも。

東京国際映画祭2017で観た11本の記録(コンペ以外)

  • ワールド・フォーカス
 
Underground [ Pailalim ]
監督:ダニエル・R・パラシオ
バンギスは家族とともに墓地に住む貧しい墓掘り人。娘が病気にかかり、入院の費用を捻出する必要に迫られた彼は危険を承知のうえで、最近埋葬されたばかりの棺を掘り起こし、装飾品や遺体を横流ししてカネに換えようとするが…。日々の暮らしのためにダーティな行為に手を染める庶民を描くフィリピン映画は少なくない。『ローサは密告された』では、家族経営の売店の女主人が麻薬を平然と扱っていたが、本作では墓掘り人が違法な墓荒らしへとエスカレートしていく。パラシオ監督はブリランテ・メンドーサ監督が主宰するワークショップに参加し、長編1作目となる本作でただちにサンセバスチャン国際映画祭に入選した逸材である。
 
フィリピンの、墓地に住む人々の話。墓と言っても色んなランクがあり、底辺だと横穴マンションタイプで壁面みっしり(お棺を横穴に納めてコンクリートで穴をふさぐ。場所がなくなると、古そうなやつを掘り出しちゃったり)。住むのはそういう墓ではなく、おそらくお金持ちのもので、動物園の檻みたいというのが一番近いか。装飾つきの鉄格子と屋根、床があり、中に石棺がある。扇風機やテレビを持ち込んでいたりして(電気はどこから…)、寝るのは石棺に布団を敷いて。時に警備隊が来て追い出されるが(その時、持ち物は墓の屋根に上げとく)、管理人に1人いくらか払ってまた入れてもらう。
本当にそういう暮らしをしている人たちがフィリピンにはいるらしい。そして、墓地レベルも色々あるようで、とても危険で映画撮影なんかしていられない場所もあったそうである。
「墓に!住むのか!」とこれを観て驚愕したのだが、その後別のドキュメンタリー番組で、リベリア元少年兵が墓地に住んでいる様子を観たので(そちらは石棺に入って骨と一緒に寝ていた)、結構住むケースは多いのかも知れない。
「知らない世界を知る」という意味では、本作は映画祭で一番印象に残った。
 
 
ポップ・アイ
Pop Aye  
監督:カーステン・タン
失意の建築家がバンコクの街中で幼いころ飼っていた象のポパイと再会。かつて一緒に育った農場をめざして象と人間の旅が始まる。サンダンス映画祭で話題沸騰、新人女性監督カーステン・タンのゆったりゆっくりロードムービー
 
中年クライシスと、象さんとの旅。象さんとてくてく歩き、ヒッチハイクをすると、乗せてくれるトラックがあったり、ホント?タイでは普通?とわくわくする。どうやらタイでは象の移動は申請が必要らしい、などと知ったり。
しかしこれ、象さんがいて、オカマちゃんやホームレスが出てきて、チャーンビールを飲んで、都会と田舎のギャップが広くて…と、なんとなくタイのステレオタイプっぽい描き方が変に気になって、きちっとした映画ではあったけれど、何となくハマれなかった。