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映画とどこかまで行こう

主に観た映画の感想を。新作・旧作、劇場・DVD鑑賞混じります。時々テレビドラマも。

凶悪 :ポスター最恐

映画

山田孝之が好きなので、出演作はとりあえず観る候補に入れる(これを山田枠と呼ぶ)。しかも本作はピエール瀧リリー・フランキーが世にも恐ろしい犯罪者を演じるということなので、ずいぶん前から楽しみにしており、なるべく内容の情報を入れないようにして公開を待っていた。

そして、こちらも楽しみにしていてリリーさんが良き父を演じる『そして父になる』は、リリーさんに恐ろしいイメージがつく前に先に鑑賞を済ませ、実話を元にした凶悪犯罪ものだということで、以前観た『冷たい熱帯魚』級の疲労感とストレスを覚悟して、体調万全にして臨んだのであった。

結果、面白かったけど、そこまでの覚悟は必要なかった。考えてみれば、本作は主観が事件を取材する記者や罪を告白する側なので、主人公視点で「殺される!」的な恐怖やストレスを味わう必要はなく、終わってしまったことの傍観に徹することができる。あくまでも観客のポジションは他人事の覗き見。安全な場所から恐怖を楽しむ、犯罪ルポに興奮する野次馬そのもの。

観た後で原作も読んでみて、映画として実にうまくまとめてあるなぁと感心した。拾うところ、削るところ、改変するところが的確で、複雑な事件を分かり易く見せているし、映画としてのテーマも加えてある。

原作は淡々としたルポに徹し、最後に、衰退しつつある紙媒体のジャーナリズムにしかできないことへの誇りが感じられたのに対し、映画の方は、「"凶悪"とは何か」という点に焦点を当てているように思った。主人公(記者)側の家庭状況を加えることで、犯罪者側の凶悪さだけではなく、犯罪に魅せられる側の狂気やいやらしさや、犯罪にはならないけれど誰かの人生を犠牲にする可能性まで、きっちり見る側に気付かせる。また、見ているうちに告白者の死刑囚にちょっと思い入れてしまっても、きっちりこの人は人殺しなのだと気づかせてもくれる。

凄く分かり易い映画だ。観ていて頭を使う必要がない…と書くとなんだか褒めていないように聞こえるかもしれないけれど、言いたいことをきちんと伝える技術があるということだ。

ただし全てを鑑賞中にクリアにしてしまう分、尾を引くものが少なく、案外印象に残らなかったような気もする。上手な映画になんてことを言うんだと自分でも思うけれど、そこが何だか惜しく感じた。ポスターが一番恐かったなぁ。

ところで主人公の家の本棚にみっしりハヤカワミステリが並んでる場面があったけれど、あれは主人公が元々ミステリ好きで事件にのめり込み易いキャラだということを表現しているのだろうか。